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Sさんというひと。
取引先のSさんは、マンガの『エースをねらえ!』に登場する宗方コーチのような風貌で、「ああ、こんな人が本当にいるんだなあ。」と男の私でも嘆息するほど美しい人であった。
身長は180センチくらいで、肩まである長い髪はいつもサラサラ。それにスーツをビシッと決めて颯爽と歩くのだ。さぞかしモテることであろうと皆、羨望のまなざしで彼を見ていた。

ところがある日忽然とSさんは姿を消してしまう。
引き継ぎの人に行方を聞いたが、はっきりしたことは言えないと口ごもることから、これはどうも面倒な事になっているのではないかと察し、それ以上は詮索しないことにした。
こういう事はいずれ時が来ればわかるのだ。直接の関係者以外の人間はあまり首をつっこまない方が良かろうと、あえて距離を置いていた。
みな忙しい。いつしかSさんが不自然な失踪をしたことさえ忘れてしまった。

半年が過ぎた。先日、とある業界団体の展示会に参加することになった私は、そこでSさんと再会を果たしたのだ。

Sさんは、ミニスカートをはいていた。

私は瞬時に理解したので、Sさんがいなくなる前と同じように振るまった。
それが正しいのかどうか、よくわからないけど。

Sさんの仕草は完全に女性だった。声も女性そのもので、か細く、ささやくようだった。
しかし、やはり顔は男なので、どう化粧してもオカマが女性のメイクをしているようにしか見えない。男としては美形なんだけどね。スマンSさん。
事情が飲み込めない周囲の人は遠巻きにクスクス笑っているように見える。
自分はそっちの方が気になっている。
ふたことみこと言葉を交わし、その場は別れた。

実は事前に相談を受けていたという同僚のオバサンから事情を聞く。
数日前から職場には戻っていたが、社外の人に会うのはこの日が最初らしい。
あえてこの場に来ることを決めた彼、いや彼女の気持ちを思うと胸が熱くなった。
ずっとずっと悩んでいたのだそうだ。そして自分にとって一番自然な姿を選んだのだという。
その決意、その勇気たるやいかほどのものか。
なかなか想像できるものではない。

人混みの中でSさんの姿が見える。背が高いからすぐにSさんだとわかる。
周りはスーツ姿のサラリーマンばかりなので、なおさらSさんは目立つ。
私はしばらくSさんを遠くから見ていた。
知り合いに出会ったSさんが頭を下げている。笑っている。

すっかり日が暮れたころ、私は会場を後にした。
駅に向かう道の途中、人の流れの向こう側にSさんの姿を見つけた。
Sさんの歩幅は大きくて、私はあっという間に引き離されてしまった。
同僚のオバサンが「Sさんのバッグ見せてもらったんだけどさ、みんな女の子の持ち物なんだよね」とちょっとさびしそうにつぶやく。
Sさん、なれて良かったね、女の子に。

そう思うとなんだか泣けてきた。

人混みに紛れて今は見えないSさんの後ろ姿に向かって

「Sさん!自分の気持ちに正直に生きるってのは、そりゃあたいへんなこった!やろうたって簡単に出来るもんじゃない!
でもあんたは自分を貫いた。すごいよSさん!
 あんた・・・・あんたは漢(おとこ)だぜ!」
と私は叫んだ。

胸の中で、ですけど。ええ。
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コメント
この記事へのコメント
ええ話やで
すごく、ええ話や。うるっと来ました。
2007/11/18(日) 02:03:19 | URL | コミカ #-[ 編集]
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